23歳の時に上京した僕の頭の中にあったのは、
“とにかくナメられてはいけない”だった。
高校卒業してすぐに通信制の専門学校に通いながら、地元の美容室でアシスタントとして働いてきた僕は、それなりに技術にも接客にも経験、自信があった。
とはいえ上京した次の日に、いきなり東京の原宿と代官山に店舗がある会社に面接を受けた僕は、なんというか、、パプリカやクレソン、ホワイトアスパラなどのオシャレ食材の中に、じゃがいもがエントリーした気分。
“埋もれてはいけない”
“インパクトを与えなければ”
“気持ちで負けたら負けだ”
そんな想いでいっぱいいっぱいである。
とにかく強気な態度で臨んだ。
そんなただの世間知らずの生意気な若造に、
社長の顔には明らかに怒りが見えたが、面接だけでは分からないという事で、
なんとか2日間の研修テストに入った。
研修ではそれなりに動けたつもりだったが、
なによりスタートの印象が悪かったので、まぁ落とされるだろうと思っていた。
そんな中、先輩のナガミネさんのヘルプについた時、ナガミネさんはお客様と育毛剤のお話をしていた。
「育毛剤は頭皮の化粧水なんですよ」
、、、!
“育毛剤ってなんか少し恥ずかしい”
そんなイメージが世間には少なからずあった中で、女性のお客様がそれを使うハードルを下げるために言った愛のあるお言葉であった。
その後スタッフルームでナガミネさんに、
「さっきの育毛剤の化粧水の例え話、素敵だと思いました。僕も使わせていただきます」
と伝えた。
そして研修も終わり、他の美容室を探そうと思っていたら、なぜかさらに1週間追加で研修期間が入り、その後合格が出た。
そしてすぐにナガミネさんに飲みに誘っていただき、そこでお話を伺った。
始めのうち過半数は僕の採用に手を挙げなかったけど、スタッフルームでのあの僕の発言に対し、「あんな事をわざわざ言ってくるやつはいなかった。あいつはアツイ美容師だ」
という理由でもう1週間研修してみようと、岡島をゴリ押ししてくれて、その後ようやく皆から賛成が出たみたいだった。
、、、、、。
そうだったんですね、、。
ありがとうございます、、。
でもナガミネさん、違うんです、、、、!
その時の僕はただ、、、!
お客様の事とかじゃなく、、
自分がハゲるのが怖かっただけで、、!!!
自分本位な男ですたい!!
もちろんそんな事は口が裂けても言わなかった。
きっかけはどうあれ、そんな僕も今のお店でもうすぐ9年目に突入します。
先生のおかげです。
また、、一緒に飲みたいです。